打たせるしかない。

左手の人差し指は、まるで堪えていた反動が全て一息に返ってきたかのように、猛烈な勢いで私を殺しにかかっていた。

震える左手を必死に止めて、ミットを構えた。

インハイに投げ込ませることはできない――腕が痛みであがらない。

構えた振りをして右手でミットを支えて、ど真ん中を要求した。

 打たせるしかない。

次にボールがミットにやってきたら――その先は、想像できない。

したくない。

 バッターの心を読む。

ど真ん中を欲していた。

その要求に近いところへあえてミットを構える。

ゆかりは――優しくて良い子で従順なゆかりは、打たれそうだなと思ってもなお、私が構えたところへ、投げ込んだ。

 ボールを操作。

振られたバットの下端にボールが当たる。

ゆかりの正面に転がった。

ゆかりがそれをキャッチして、上様へ送球――ワンナウト。

 あと、ツーアウト。

そうすれば試合が終わる。

あとは氷でもなんでもいいからとにかく冷やしまくる。

望みは繋がる。

 私たちは負けてはいけないのだ。

三人揃った試合で、絶対に負けてはいけないのだ。

もしもここで自分が降りたら、六年生だろうが五年生だろうが、私以外がゆかりをリードしたら、たぶん三点なんてあっという間に返される。

この打線を、私以外のキャッチャーが抑えているところを想像できない。

 二人目――心を読んで、アウトローを待っていることを知る。

そこに投げ込ませる。

打たせて、今度は一塁線に転がった。

上様がキャッチし、自分で塁を踏んでアウトにした。

 あと一つ。

私は――歯を食いしばった。

 チクショウ――なんでインハイ待ちなんだよッ!

 腕が上がらない。

だけど、キャッチングなんてもっとできない。

私は震える左腕を持ち上げる。

インハイまでは届かない――ほとんどど真ん中。

そこに構える。

左腕が震えないように、左膝で支える。

バレないように――バレませんように。

 その瞬間――ばちりと、ゆかりの目が私を見た。

私は凍り付いた。

バレた、と思った。

 次の瞬間、ゆかりがにっこりと微笑み、そして投球モーションに入った。

私は凍り付いたまま、左手の力を失い、ミットを落としそうになる。

けれどゆかりは私が指示した通りの場所に投げ込み――そしてバットが振るわれた。

 私は迷わず能力を使い、ゆかりの正面に、ボールを転がした。

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